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生成AIに入力してよいデータを判断する

個人情報・社内機密・公開情報を分類し、利用目的、契約、学習利用、保存、組織承認から、生成AIへの入力停止・相談を判断する手順。

生成AIにデータを入力する前に、管理責任者と情報の分類を確かめます。利用目的や入力の必要性、提供事業者の契約条件、保存・学習への利用、社内承認が分からない個人情報や機密性の高いデータは、いったん入力を止めます。

業務で生成AIを使う国内の担当者に向けた一般情報です。入力前に「止める」「相談する」を判断するための手順であり、法的な適否を確定するものではありません。個人データを扱うときは、委託や第三者提供、外国にある第三者への提供、安全管理措置、要配慮個人情報への該当などを現行の資料で個別に確認します。判断に迷う場合は、個人情報保護・法務・セキュリティ・データ管理の各責任者に相談してください。

迷ったら入力を止めるデータ

次のいずれかに当てはまり、承認済みの利用環境と手順を確認できない場合は、入力欄へ貼りません。

  • 顧客・従業員・取引先を識別できる情報
  • 健康、信条、犯罪歴等の慎重な取扱いが必要な情報
  • パスワード、APIキー、秘密情報、認証トークン
  • 未公開の契約、価格、設計、ソースコード、財務情報
  • 他社から秘密として預かった情報
  • 本人やデータ管理責任者へ説明できない情報
  • 取得元、利用権限、削除方法が分からないデータ

IPAの中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版(2026年8月17日確認)は、漏えいすると問題になる機密性の高い情報や個人情報を生成AIへ入力しないという、保守的な確認基準を示しています。これはセキュリティ運用上の目安であり、すべての個人情報入力が法律上同じ扱いになるという意味ではありません。

データ分類を一つにまとめない

「社内情報」と「個人情報」は同じ分類ではありません。一つのデータが複数に該当することもあります。

分類 主な確認先
公開情報 公式サイト、公開済み手引き 公開版と更新日
社内限定 社内手順、会議資料 データ管理責任者、社内方針
契約上の機密 顧客資料、NDA対象 契約、法務、責任者
個人情報 氏名、連絡先、評価記録 個人情報保護担当、利用目的
慎重な取扱いが必要な情報 健康情報等 個人情報保護・法務責任者
認証情報 パスワード、トークン、秘密鍵 入力禁止、秘密情報管理
規制・業界対象データ 医療、金融等 専門責任者、適用規則

本記事では、社内の機密区分と、個人情報・契約等の確認欄を分けます。一つのラベルだけで入力可否を決めず、該当する確認先をたどります。

入力可否を決める役割

次は社内での分け方の例で、法令上の役職を定めるものではありません。

役割 主に確認すること
業務責任者 利用目的、必要な入力、出力の使い方、人の確認
データ管理責任者 データ区分、利用権限、最小化、保持・削除
個人情報保護・法務責任者 利用目的、同意の要否、契約、委託・第三者提供等
セキュリティ・IT責任者 承認済み環境、認証情報、アクセス、ログ、外部連携
調達・契約責任者 契約プラン、再委託、処理地域、更新・終了条件
出力承認者 外部送信、公開、別システムへの保存

一人が複数の役割を担う場合も、確認した人と最終判断者は相談メモへ分けて残します。

入力前の5問

1. 誰のデータで、誰が決められるか

外部のAIサービスへ送信してよいかどうかは、閲覧権限とは別に確認します。データ管理責任者や本人との関係、契約、社内方針が判断材料になります。

2. 利用目的に本当に必要か

個人情報保護委員会の生成AIサービスの利用に関する注意喚起(2026年8月17日確認)は、個人情報取扱事業者が個人情報を含むプロンプトを入力する場合、特定した利用目的の達成に必要な範囲内か十分に確認するよう示しています。

「あると便利」ではなく、何を出力するためにどの項目が必要かを書きます。氏名が不要なら削り、全文が不要なら必要箇所だけにします。

3. 応答以外に利用されるか

同じ注意喚起は、本人同意なしに個人データを入力し、応答結果の出力以外の目的で扱われる場合、法令違反となる可能性があるため、機械学習へ利用しないこと等を十分に確認するよう示しています。

外部サービスへの送信を一律に同じ法的取扱いとは考えず、利用者の立場やデータの流れ、同意、契約、提供事業者の取扱いを個別に確認します。

4. 実際に使う環境の条件を確認したか

製品名だけでは足りません。確認日とともに次を記録します。

提供事業者・製品:
個人向け / 法人利用環境 / API:
契約主体:
学習利用:
保存期間:
人によるレビュー:
処理・保存地域:
再委託先:
外部ツール・接続機能:
削除方法:
設定を確認した日:
確認したURL・契約:
再確認責任者:
次回確認日:
再確認のきっかけ:

「学習に使わない」と「保存しない」は別の確認項目です。製品名や契約プラン名だけで決めず、実際に使う利用環境、API、フィードバック設定について、利用時点の契約・プライバシーポリシー・データ管理設定を確認します。

契約、利用規約、モデル、API、外部連携が変わったときは再確認します。再確認責任者は変更内容と入力データの区分を照合し、判断が変わる場合は業務責任者と専門責任者へ戻します。

5. 出力後の取扱いまで決めたか

入力を削っても、AIが出力した内容を顧客へ送る、別システムへ保存する、学習データへ戻す段階で新しいリスクが生じます。誰が確認し、どこへ保存し、いつ削除するかを決めます。

判断フロー

公開済みで再利用条件を確認できるデータも、個人情報等の分類、利用目的、最小化の確認を省きません。すべて同じ順番で確かめます。

Q1 取得元と利用権限を説明できるか
   公開情報なら再利用条件も確認したか
  いいえ / 不明 -> 入力を止める
  はい -> Q2へ

Q2 個人情報・契約上の機密・認証情報・高機密情報を含むか
  はい / 不明 -> 入力を止め、データ区分と扱いを責任者へ相談
                  Q3とQ4を確認したうえでQ5へ
  いいえ -> Q3へ

Q3 利用目的を説明でき、必要な最小限のデータへ減らせるか
  いいえ / 不明 -> 入力しない方法を選ぶ
  はい -> Q4へ

Q4 実際に使う環境の契約、学習への利用、保存、設定を確認したか
  いいえ / 不明 -> 入力を止める
  はい -> Q5へ

Q5 相談メモに判断結果、最終判断者、承認範囲・環境・条件・期限が記録されているか
  未確認 / 却下 / 期限切れ / 条件未充足 -> 停止を続け、入力しない
  記録済みの承認 / 条件を満たした条件付き承認
    -> 承認された範囲・環境・条件内で、必要最小限のデータだけ使う

入力を減らす代替

元データ 代替案
顧客メール全文 個人・契約情報を除いた要点
実名付き一覧 作業に不要なら仮IDへ置換
本番データベース 合成データ、最小サンプル
契約書全文 許可された条項だけ
ソースコード全体 再現に必要な最小部分
アクセスログ 識別子を除き、期間と項目を限定

削除や置換はリスクを下げる手段であって、安全を保証するものではありません。個人情報保護委員会の仮名加工情報・匿名加工情報のガイドライン(2026年8月17日確認)が示すように、氏名以外の属性の組合せから個人を識別できる場合もあります。匿名化したつもりでも、自由に使えるとは限りません。

相談するときのメモ

目的:
利用者:
入力したいデータ:
データ管理責任者:
個人情報・機密の有無:
最小化後の項目:
利用する製品・契約プラン:
学習利用・保存:
外部連携:
出力の用途と保存:
希望する期間:
判断してほしい点:
判断結果(承認 / 条件付き承認 / 却下 / 未確認):
最終判断者:
判断日:
承認範囲(目的・データ・出力):
承認された利用環境(契約・アカウント・API・設定):
承認条件:
有効期限・再確認日:
判断記録の保管先:
主担当:
副担当・代理者:
引継ぎのきっかけ:
引継ぎ完了条件:

判断結果が未確認、却下、期限切れなら停止を続けます。口頭で相談しただけでは許可経路へ戻りません。最終判断者と承認範囲・利用環境・条件・期限をたどれる記録があり、Q3とQ4も満たす場合だけQ5の「記録済みの承認」へ進みます。

相談メモの記入例

次は架空の例です。判断が終わるまでは合成データだけを使う前提にしています。

目的: 問い合わせ返信の下書きを試す
入力したいデータ: 顧客メール。氏名、注文番号、契約内容を含む
データ管理責任者: 営業責任者
最小化後の項目: 問い合わせ種別と製品名。個人識別子は除く
利用環境: 法人APIを候補としているが、契約と設定は未確認
確認したい点: 利用目的、保存・学習利用、処理地域、出力承認
相談先: 個人情報保護・法務、セキュリティ、調達
判断結果: 未確認
最終判断者・判断日: 未定
承認範囲・利用環境・条件: 未承認
有効期限・記録場所: 未定
判断前の対応: 個人情報を含まない合成データだけで評価する
主担当: 導入担当
副担当・代理者: 営業部門の副担当
引継ぎのきっかけ: 担当変更、契約・モデル・API・データ区分の変更
引継ぎ完了条件: 副担当が判断記録と停止手順を確認し、承認範囲を説明できる
再確認責任者: 導入担当。契約・モデル・API変更時に再確認する

目的が曖昧なら、まずAI案件の課題定義へ戻ります。提供事業者を含む方式選びには、作る・買う・やめる判断表が使えます。AIがWebページやメールを読む場合は、データを使う許可だけでなく、プロンプトインジェクション対策も確認します。

よくある質問

公開情報なら何でも入力できますか

公開されていることだけでは、自由に再利用できると判断できません。文化庁の他人の著作物を利用する場合の案内(2026年8月17日確認)を参考に、著作物性、保護期間、権利制限、許諾を確認します。契約や利用目的も確認し、必要な範囲に限定してください。

法人契約プランなら個人情報を入力できますか

法人契約プランという名称だけでは判断できません。実際の契約、設定、データフロー、利用目的、本人同意の要否、組織方針を確認します。判断できなければ個人情報保護・法務責任者へ相談してください。

氏名を消せば安全ですか

氏名以外の属性や文脈から個人を識別できる場合があります。置換はリスクを下げる方法の一つですが、安全を保証するものではありません。迷う情報は入力せず、相談先と確認項目を先にそろえると、判断を個人任せにせずに済みます。